芸術を考えると、ペーチはブダペストについで2番目に大切な町といえるでしょう。
世界遺産に登録されたローマ時代の遺跡をはじめ、現在画家の展示会まで見所は数えきれません。
ペーチはハンガリーの南部、メチェク山のふもとに位置する150万人の町で、ブダペストから200km離れています。
ペーチはローマ時代でも人間が住んでいたところで、ソフィアネと呼ばれました。ローマ時代の遺跡として初期キリスト教墓地(カタコンベ)が残っています。
ハンガリー建国後、司教座の町となって、中世時代に渡って経済的にも文化的にも大きな役割をはたしました。14世紀に我が国の最初の大学がこの町で創立され、現在もここで3万人の学生が勉強しています。
150年のオスマントルコの占領時代に、モスクや浴場が建てられました。
19世紀に有名な芸術家ジョルナイ・ヴィルモシュがこの町で陶磁器工房を創設しました。現在でも「ペーチ」という地名を聞くと、ハンガリーの人たちはジョルナイの芸術を連想します。
180年の歴史があるジョルナイ工房は、エレガントな花模様のディナーセットの作成が典型的でしたが、徐々に「アラビア」模様がこの食器の特徴となりました。そして、19世紀の終わりごろジョルナイ・ヴィルモシュは多くの芸術家を招待し、彼らは自分のアイデアを実現して、独特なデザインの作品(花瓶、お皿、電灯など)がたくさん作られました。このようにしてジョルナイ風アール・ヌーヴォー様式が生まれました。ジョルナイ工房で独自で開発された「エオジン」釉薬の作品は玉虫色に輝き、強い印象を残します。
ペーチ市を訪問する観光客には、ジョルナイ芸術の見学は最も重要な目的のようです。
市内に位置するジョルナイ美術館以外に、郊外の工房を囲んで「ジョルナイ・クオーター」が見所となっています。ここには、美術館、人形劇場、プラネタリウムなどもありますが、ハイライトは「ジョルナイの黄金時」展示会です。この展示会の作品はもともとアメリカへ亡命したハンガリー人技師「Gyugyi Laszlo」のプライベートのコレクションでした。Gyugyi氏は世界中ひとつだけの魅力的な作品を、趣味としてオークションで購入したり、家族遺産から購入したりと収集し続け、晩年にハンガリー国家へ売却しました。このコレクションはハンガリーで最も貴重な展示会のひとつだそうです。
ジョルナイの芸術品の中で、アラビア諸国芸術の影響で開発されたスタイルと、アール・ヌーボースタイルの2種類の様式があります。両方の様式の傑作は「ジョルナイ・クオーター」のコレクションで楽しんでいただきます。
ペーチ観光の際、4本の鐘楼のあるネオロマネスク様式の大聖堂の内部見学もお薦めいたします。中央広場はセーチェニ広場(Széchenyi tér)と言います。ここで、お客様は「ガージ・カーシム・パアシャ」のモスク、フニャディ将官の騎馬像、折衷的な様式の市庁舎をご覧いただきます。この広場の「ジョルナイの泉」はペーチのシンボルとなりました。